監督:石原立也
近頃僕は「時間の流れ」というものに疑問を持っています。
言葉の喩えとして分かりやすいので
世間一般に定着し、あたかも川の流れのように
時間の流れの中を人が移動しているような錯覚に陥ってしまいますが
そもそも時間などというものは無く
ただ事象が変化するのみ。
…まあ良く言われることですが、
感覚として理解できる人がどれくらいいますか。
分かりやすく言えば、僕らの世界というのは
フィルムのコマのように、
時間が経つにしたがって次のコマに移動するのではなく、
1コマの中で全てが(宇宙の始まりから終わりまでもが、
いやそれ以前からさらに果てまでも)
完結するということです。
したがってタイムマシンなどというものは有りえず、
全ての事象を元に戻す装置というものができるのならば
それもありですが、
近頃の量子論など見ていると、
そもそもあやふやな波のようなもので出来ているこの世のすべてを
元通りに以前の状態へ戻すなどということは
とうてい不可能なように思います。
しかし僕たちは若かった時のことを
思い出すことができます。
教室の匂いや、暑い夏のグラウンド、冬のストーブの匂い
高校はスチームでしたが。
現在中高生進行中の皆さんには信じられないかもしれませんが、
50歳前のオジサンが高校生の頃を
文字通り昨日の事のように
思い出せるのです。
あたかも“感覚”のみが時間を遡ったかのように。
さて、いつもの事ですが
仕事とはいえ、一つの作品が終わると
祭りの後のようで寂しいものです。
僕はこれまでに
高校生が主人公の作品にいくつも参加させていただきました。
その度ごとに僕はキャラクターたちと一緒に高校生活を送っていて、
死ぬ頃にはどれが本当の自分の高校生活だったのか
分からなくなってしまいそうです(笑)
なにしろ久しぶりに以前係わった作品の学校を見ると
懐かしい気分でいっぱいになってしまうほどですから。
アニメ「ユーフォニアム」は最終回を迎えましたが
久美子たちの夏は続いていきます。
あの最終回ラストカットの空は
僕の懐かしい高校時代の空と繋がっているような
そんな気がするのです。
今日の青空は、何十年も前の
あの青い空に繋がっている、
そんな気がするのです。
シリーズ演出:山田尚子
北宇治高等学校吹奏楽部の音がひとつになりました。
静かに、淡々と。でも恐ろしいくらいの熱さをもって。
久美子たちの青春が、みなさまのこころをじっくりあたため続けて
ずーっと冷めませんように。
金賞おめでとう!